古参80Sヘビーメタルファンからみたブラックメタルの面白み (Immortal編)

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 ベスト盤は別として、20数年ぶりにメタルのオリジナルアルバムを買った。
(BabymetalとVan halenの企画盤は別として)

ブラックメタルバンド 「Immortal」8枚目のアルバム「All Shall Fall」である。

「All Shall Fall」

発売日:2009年
レーベル: Nuclear Blast Americ
ASIN: B002HVEUV0

immortal

①All Shall Fall
②The Rise Of Darkness
③Hordes Of War
④Norden On Fire
⑤Arctic Swarm
⑥Mount North
⑦Unearthly Kingdom

 

 

 

ドリームシアターの「Awake』アルバム(1994年)、以来になる。

今さらながらブラックメタル初挑戦である。

 なぜ、このアルバムを注文したのか。 
immortal all shall fall

そして古参80年代メタラーで視聴歴にブランクのある僕の目にブラックメタルがどのように写ったのか。

10代~30代前半のメタルファンとブラックメタルに感じる肌感は違うと思う。

 そんなことを記事にしてみよう。 

ブログで何度も書いているが、メタルは80年から93年ごろまでリアルタイムで聴いた。

その後は社会人になり音楽そのものと距離を置くことになる。
それ以降、たまに書店でメタル雑誌「BURRN」を立読みすることはあってもメタルには関心を失っていった。

ブラックメタルという存在を知ったのは2000年代の半ばだったかな。

顔を黒く塗りたくった不気味なバンドをYouTubeで視聴したのが最初である。

なんだこの連中は?」そう思いネット検索すると、92年、93年ごろ出てきた「ブラックメタル」というジャンルのグループであることが分かった。

インナーサークルとか犯罪にまで及んだ背景も一応、読んだけどね。

だけど、まっさきに思ったのがこうである。

「今さら、悪魔やサタンがどうたらこうたらかよう~ ガビーン」
satan

メタルが悪魔や黒魔術のような世界を扱うことについて、部外者(メタルを聴かない人たち)から散々ステレオタイプ的な目で見られてきたことを80年代に経験したからだ。

「90年ごろデスメタルが出てきたじゃん」と言われるかもしれないが、これらは悪魔には結びつかなかった。
デスメタルなるものはスラッシュメタルにさらに過激な表現を加えたスラッシュの亜流という捉え方をしたからだ。

今は亡きチャック・シュルディナー率いる「DEATH」はよく聴いた。

92年、93年ごろになるとちょうどメタルが下火になって、かわりにドリームシアターのような前衛的なバンドが注目されはじめた。

そんな折、悪魔色漂うブラックメタル勢が雨後のタケノコのごとく出てきた背景に余計、今更感を覚えたのだ。

 80年代半ばごろからすでに「メタル=悪魔」の今更感はあった。 

80年代はメタルの全盛期と一般的にいわれているが、ここ日本においては少なくともメタルを聴いているリスナーは
多数派ではなかった。
サザンオールスターズやユーミンなどニューミュージックを聴く人たちの方がよほど多かっただろう。

今は分からないが、多少肩身が狭かったのだ。

日本のメタルバンド聖飢魔IIが1985年にデビューしたとき、メタル専門誌である「BURRN!」の編集長、酒井康氏が彼らのファーストアルバムに“0点”という最低点を付けたのは語り草になっているね。

なぜ、メタル専門誌・編集長ともあろう方がこんな点数を付けたのか?

色々な意見があるだろう。僕はこう思うのだ。
satan1

メタルを聴かない人たちの一部に「メタル=悪魔がどうたらこうたら=騒がしい」という偏見を持たれている。恋愛から社会悪まで様々なテーマを扱い、少なくとも高尚な音楽なのに偏った見られ方にはうんざりだ。

それがまた、とってつけたような「悪魔が来たりてヘヴィメタる」とは何事だ。メタルをバカにしてるのか。

そんな気持ちがあったのではないか。

「ヘヴィメタ」というネーミングも80年代当時は偏見を含んだ軽蔑の意味合いがあったからね。

ビートたけしが日本のメタルをやっているアマチュアバンドについて

「悪魔やサタンがどうのこうのといったって、バンドから離れりゃメンバーは吉野家で牛丼食って、湯おけ片手に銭湯いって下駄箱に「つっかけ」入れている姿を想像するとその生活感というかギャップが笑える」

なんておちょくっていたな。

 「IMMMORTAL」をいつ知ったか 

さて、この「IMMMORTAL」というバンドを知ったのはYouTubeに外国の方が投稿してる「The 10 most ridiculous BlackMetal videos YouTube」という動画から。
数年前だと思う。

日本語に訳すと最もバカバカしい・おかしいブラックメタルのビデオ 10選である。

カウントダウン形式で10位から1位まで紹介している。
これがまた、凄いのなんのって。。。

「The 10 most ridiculous BlackMetal videos YouTube」

最初見たときはびっくりしたというか、笑っちゃったというかとにかくインパクトがあったね。

ボンジョビやモトリークルー、ガンス&ローゼズなどカッコいい
HR/HMのビデオが輩出された80年代を経て映像技術だって向上しているはずである。

そんな90年代に入って作られたビデオクリップにしてはあまりにチープ過ぎないか。
これじゃミュージックビデオ黎明期に制作された80年代初期のものより劣化してないか、なんてね。
ざっと紹介すると以下になる。

7位 6位 1位のものは割と作りこまれているとは思うけど。
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10位・・バンド名Trollkotze – 曲名Im Marchenwald 
(はっきりいってよくわからない なんじゃこりゃ)
↓以下「バンド名」ー「曲名」ね

9位・・・Darkkirchensteuer – Leb Doch Selber

最初に驚いたのがこれ。バンド名も読めないよ。
安っぽいサウンド、ギャーアギャア 騒ぐだけでわけ分からない。
ビデオクリップが凄い。
森の中の撮影、バンドの中心ともおぼしき人物が岩から飛び降りて自殺を試みて失敗したり、木に縄をかけて首つった後、ぐた~っとして、そのうちに死体?がヘッドバンギングしはじめたり、とにかくはちゃめちゃである。

全編、ご興味のある方はどうぞ
YouTubeへのリンク
https://www.youtube.com/watch?v=YBRfOGUKaGE

laugh-98459_640

8位・・・Arckanum – Gava Fran Trulen

これも凄い。

映像が全編、オレンジ色で統一されていて、不気味な感じは出ている。
登場する主役のアーティストが森の妖怪というのか天狗というのか???
悪の帝王というには叫び声がしょぼい。

「薄気味悪い」演出は成功しているとは思うけど

全編、ご興味のある方はこれもどうぞ
YouTubeへのリンク
https://www.youtube.com/watch?v=OHMEBl0zMkE

7位・・・EMPEROR – The Loss and Curse of Reverence

後に大物バンドになるようだ。

髪が短く、普通の青年のような髪型なのだが、ゴジラみたいな衣装の組み合わせにむちゃくちゃ違和感を感じた。

6位・・・SATYRICON – Mother North

最初に出てきたメイクに驚いた。
ブラックメタルの黒塗りメイクの中でもかなり エキセントリック なものじゃないか。

ぎょえ~っ 気持ち悪い。

5位・・・Trollech – Ve stinu starych dubu

これも凄い。というか、歌っている?人の風貌が笑える。

一生懸命、強面で歌っているのだけど、ちっとも怖くないよ。
魔法使いのお爺さんメイクといった感じだ。
なんとなく「志村けん」みたいで笑える。

これもどうぞ、全編ご覧になりたければ。。
YouTubeへのリンク
https://www.youtube.com/watch?v=ee0yDlLhzXg

 ここからIMMORTALの3連発である。 

4位・・・IMMORTAL – Blashyrkh (Mighty Ravendark)

今まで暗黒の森の中での演奏シーンが多かったのだが、これになったら
小高い丘の上でのプレー、空気感が変わった。

ここにきて歌っている?人の存在感が増した。

3位・・・IMMORTAL – Grim and Frostbitten Kingdoms

同じように小高い丘の上か?雪山?
洗面器に顔を付けてスクリーミングしているボーカル氏のアングルが斬新と言えば斬新だ。
顔アップのカットが沢山おりこまれており、ギョエ~って感じ。

2位・・・Immortal – Call Of The Wintermoon

 このビデオクリップがある意味一番衝撃だった。 

三角帽子をかぶったコープス・ペイントの男が妙にけったいである。
それぞれ、メンバーの表情、強面演出の顔カットがあるが怖くない。
サウンドはマァマァだけど、ボーカルがドスが利いたガラガラ声というより、わめき声に聴こえる。

火を噴いたり、それぞれの動き、アクションがなんとなくコミカルで笑えてくるんだよ。
本人たちは本気で「暗黒の森の中」を演出しようとしているんだろうけど。

2:42~2:46 3人そろってポーズとってるシーン、なんかオカシイ。フフフフ ごめん。

1位・・・Ancient – Lilith’s Embrace

確かにB級丸出しのビデオではあるけど、1位はImmortal – Call Of The Wintermoonにしてもらいたかったな。

全体としてはチープな映像、音質、音楽が共通点。
どれもこれも「青木ヶ原樹海」のようなジメジメしていて暗い森の中のシーンが多いね。
ブラックメタルのひとたちは余程、森が好きらしい。
forest

これを機にImmortalに興味を持ち、他のライブビデオなども視聴してみたのである。
で、とりわけ印象的だったのはImmortalのボーカル件ベースであるアバスさんの存在感だった。

カッコよくはない。どちらかといえば、動きがジジ臭い。
しかし、このアバス兄のビジュアル、へんてこりんなアクション、演奏技術、どこか
魅力を感じたのだ。

彼らの代表曲One By Oneという楽曲はリフやメロディーなどよく出来た曲だと思ったし。
こんな感覚を抱いたのは初めてだった。

元々ベース兼ボーカルだったのがいつのまにかリードギター兼ボーカルになっている。
考えてみりゃ、このアバスという人、凄いなぁと。

 POPミュージックもメタルも音楽性と同様、アーティストの醸し出す雰囲気、コンセプト、何より外見、見栄えも大きなポイントだ。 

ガンズ&ローゼズがなぜあんなに売れたのか?

第一に音楽が素晴らしかったのは間違いない。でもボーカルのアクセルが細身でイケ面だったし、煙草をくわえながらギターを弾くスラッシュやダフ・マッケイガンが凄くクールじゃん。

バンドが醸し出すワルで危険なイメージ、それがむちゃくちゃカッコよかった。
そうじゃなかったらあれほど売れていなかっただろう。

ボン・ジョビも同じ。心の琴線をふるわせるメロディーに哀愁のあるハスキーな歌声、ジョン・ボンジョビもイケメンだったからねぇ。その傍らには長身で甘いマスクのリッチーサンボラ。
う~ん 絵になる イイねぇ。
スター

あ、こんなこと書くと「あんた そっちの気があるんだろう?」と誤解されるかもしれないけどそうではない。

ネットでも雑誌でも「あの美人女優が○○」みたいな記事があれば、「何だ 何だ。。」と真っ先に関心を寄せるけど「あのイケメン俳優が熱愛」とか「イケメン俳優が作るレシピ」なんてタイトルには何の関心もない。

しかし、コンビニやユニクロで買い物したり、外食したときなど、不細工な店員よりもイケメンで爽やかな青年に「いらっしゃいませ」などの対応された方が気分が良い。

顔や外見で人を判断すべきではないが、こればかりは「人間の本能」「通常、人がもっている肌感」というもので、致し方ないことではないか。

そんなわけで一時期、そのルックスやキャラクターで「IMMORTAL」に関心をよせていたのだ。(CDを買う程ではなかったが。。)

 それから、だんだん日は過ぎていき、YouTubeで久しぶりに再会したIMMORTAL」に「お~っ」と喜びの声を上げたのである。 

「All Shall Fall」のプロモーションビデオである。
サウンド、メロディー、ドラマティックな曲構成が素晴らしい。

同じ氷山の世界でも「桶に顔を突っ込んでいた過去のビデオ・Grim and Frostbitten Kingdoms」とはまるで違う。

雪山の頂きから見下ろす雄大な空間を表現した映像美。
飛びゆくコンドルが良い味出してるねぇ。

あの「Call Of The Wintermoon」から格段に進歩した「IMMORTAL」がいたのである。
プレーしているメンバーが皆、勇ましい。
三角帽子の彼らではない。大変身でびっくりであった。
氷山1

YouTubeの再生回数も1000万回越えてるよ。
ブラックメタルのPVで他に1000万回越えは
そうないだろう。 凄いこっちゃ。

田舎のどんくさい兄ちゃんが、都会でもまれて、垢ぬけて、オシャレな青年社長になったかのような変わりようである。
はっきりいってカッコイイ。

2:25~2:30のアバス兄さんのアクションは相変わらず、ジジ臭い感じはするけどね。
そこが彼のもち味でもある。この辺がいいんだ。

どんくさいオジー・オズボーンのアクションと似たところがあるように思うのだが、どうだろう。
どちらも愛してやまないキャラクターである。
アバス兄をオジーの後継として推したい。

 そんなわけでCDを注文。 

今どき珍しい7曲のみ。これぐらいの曲数がいいねぇ。音質もクリアーで良いぞ~っ

真正のブラックメタルマニアがどのような評価をしているのかは分からない。
分厚いリフの応酬が心地よい。これぞメタルの醍醐味である。

ブラックメタルにしてもデスメタルでも、こうした極めてコアなジャンルにおいては「音質は劣悪な方が、らしくて良い。もしくは好ましい。」
一方でそんな文化があるね。

でも、アーティストが込めた演奏技術の妙、ギターでもドラムスでもそれらから発せられる音色の細かいニュアンスなんかを味わうには「高音質」であるにこしたことはない。

その点、この盤は十分な音質を確保している。
透明感があり、音の広がりも申し分ない。

ブラストビートもドコドコと体に伝わってくる。
迫力満点だ。

今後も彼らの動向を見守っていきたいと思う。

 

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